力ではない技術を身に付けようと’合気’の技を稽古しているのに、
いつまでも腕力を捨てることが出来ない人というのは多くいます。
頭では腕力を使ってはいけないと分かっているのに、力を入れてしまうのはなぜでしょうか?
私は、思い込みによる勘違いが一つの原因だと考えています。
成人男性だと大体体重が60kg以上ありますが、その男性を倒そうとした場合、
その体重を動かすだけの力がいると無意識に思っていないでしょうか?
これは正しそうに思えますが、実際には間違っています。
押したり引いたりしても相手が倒れないというのは、相手が身構え、
反応することが出来る状態の時の話です。
身構えることが出来ない状態であれば、人は容易にバランスを崩し、転倒します。
これは立っている状態で不意に押されると、軽い力でも大きくバランスを
崩すことからも分かると思います。
大きな力は必要ありません。
相手が身構えることが出来ない状態。
言い換えると、相手がこちらの動きを予測することが出来なければ、
何をやっても不意をつくこととなり、相手は大きくバランスを崩します。
また、人の無意識の反応を利用する方法もあります。
人は押されると無意識にその方向に押し返しますし、
引っ張られるとそれに負けまいと引き返します。
これは無意識にバランスを保とうとするための反応ですが、
それを上手く使うと相手をこちらの思う通りに動かすことが可能となります。
(言うは易く行うは難しという類の話になりますが、確かにやるのは難しくても、
決して不可能なことではありません。)
与える刺激に対する反応で、自ら動いてもらうと考えれば、力を使わなくても
相手を動かせるいうことは、ある程度理解していただけるのではないかと思います。
力を使わずに相手を動かす方法というのは、考え方ややり方がいくつかありますが、
決して出来ないことではありませんし、理屈を聞けば、ある程度納得していただけるものです。
ただ、日常で直観的に理解していることとは一致しないために、
なかなか信じ切ることが出来ないだけです。
相手が押しても引いても簡単には倒れないという思い込みがあると、力を使わないと言っても、
これぐらいの力は必要だろうと無意識に考えてしまい、力を使うことになります。
結局のところ、無意識の思い込みを変えることが出来なければ、腕力を捨てることは出来ません。
しかし、力を使わないと相手を倒すことが出来ないという思い込みは、
日常生活の延長線上にあるため、とても根深いものです。
頭で理屈は分かっていても、私も一向に変えることが出来ませんでした。
稽古では、日常の感覚に引っ張られて、力を使った技になっていました。
このまま力を使わない技を身に付けることが出来ないのではないかと不安に思っていましたが、
ある時、自分の考え方が変わっていることに気が付きました。
力を使わなくても相手は十分に倒れるのだから、力を使わない方が楽で良いと
考える様になっており、むしろ力を入れて相手を倒すことに違和感を持つようになっていました。
力を使わずに相手を倒すことの有用性を身体が理解することで、自分の中の当たり前(常識)が
自然に変わっていた様です。
といっても、まだ私の場合は完全に腕力を捨て切れたわけではありませんが、それでも
以前と比べると腕力を使わずに技を行えることが多くなってきました。
腕力を捨てるために何が必要かと言われれば、まずは腕力の完全否定だと思います。
腕力を否定し、腕力を使わない様に自分に言い聞かせながら稽古を続けることで、
いつしか身体がそれを理解し、腕力を使わない技が当たり前になります。
至極当然の結論となってしまいますが、力を使わず、丁寧に丁寧に稽古を重ねていくことが
腕力を捨てるためには必要なのだと考えています。

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