武道では、流派によっては武器術を学びます。
例えば、刀の取り扱いを学んだりしますが、学んだとしても、
現代において、刀を用いて戦うということはまず有り得ません。
もし実際に使うことを想定して稽古するのであれば、
刀は使わず、ナイフなどを使用した方が良いと思います。
では何故、刀など日本古来の武器を使用して稽古を積むのかということになります。
その理由の一つは、昔日の日本人の身体の使い方を学ぶためです。
昔の日本人と現代の日本人では、身体の動かし方が違っています。
よく聞く話としては、昔の日本人は歩く際に右手と右足、左手と左足というように
同じ側の手足を前に出して歩いていたと言います。
それをナンバ歩きと言い、現代の日本人の歩き方とは違う歩き方になります。
武道的な身体の動かし方としては、他に身体を捻らない、
前に出る時に足で地面を蹴った反動を使わないということがよく言われます。
現代の身体の動かし方に慣れている私達からすると、とても奇異に見える身体の動かし方ですが、
実はとても合理的で効率的な身体に負担の少ない動かし方です。
武道の稽古によって、これらの身体の動かし方を身に付けることにより、
日常生活を送る上で身体の負担を減らすことが出来ます。
日本の武道においては、剣術が与えた影響はとても大きく、
刀を操る身体の使い方が動きの基本となっている流派は多く有ります。
西洋的な身体の使い方が必ずしも不合理な身体の使い方だとは思いませんが、
剣術を基本とした身体の使い方をするからこそ出来る技というものがあります。
私が学んでいる’合気’の技は、一見すると摩訶不思議な技に見えますが、
やはり、その基本は剣術の動きであり、その様な身体の動かし方をするからこそ技が成立します。
力ではない技、柔よく剛を制すを体現するために必要な動きが、武道的な身体の使い方となりますが、
それを身につけることは、人間本来の自然な動きに近付くことでもあります。
稽古を通して人間本来の自然な動きを知ることが出来るのは、
現代で武道を学ぶことの大きな意義では無いかと思います。


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