よろずの一人言〜合気上げは基本だが基本ではない〜

上達論

20年程前の話になりますが、私が合気系武道に入門した当初、ネット界隈では合気上げが
ちょっとしたブームとなっていました。

合気上げとは、相手に両手首を掴まれて抑え込まれた状態から腕を上げて相手を崩す技法です。

合気上げが’合気’の技の基本ということで、当時も、そして現在も熱心に研究されている方は
多いと思います。

私も入門してすぐの頃に師から何か聞きたいことはないかと問われた時に、
真っ先に合気上げについて質問した記憶があります。

合気上げが基本と聞いていたので、まずはそれが出来なければ先に進めないと思って、
何とかそれを身に付けようと頑張りました。

それは間違ってはいませんが、今考えるとポイントが少しズレていた様に思います。

師からは親指を中心に円を描いて腕を上げると聞き、それをやろうとしましたが出来ず、
四苦八苦しているうちに15年の年月が流れてしまいました。

現在では、’合気’について自分なりに考えがまとまってきましたので、
なぜ自分が合気上げも満足に出来なかったのかが分かります。

私は技のやり方ばかりに気を取られ過ぎていた様です。

円を描いて上げるという合気上げが、どうすれば出来るのかと試行錯誤ばかりしていました。

しかし、それらの試行錯誤の結果、私が出した答えは、姿勢や呼吸・体捌き・意識の持ち方等、
一つ一つの基本が出来ていないから、合気上げが出来ないという、極々当たり前のことでした。

基本は一つ一つは地味で些細なものですが、技の成否に大きく関わっています。

昔は、何が基本かも分かっていない状態でしたので仕方がないことではありますが、
私は基本を蔑ろにし、どうすれば合気上げが出来るのかというやり方の工夫ばかりしていました。

また基本というのは、技を稽古しているうちに自然と身に付くものだと考えていましたが、
そうではなく、実際は徹底して拘って稽古しないと身に付かないものでした。

基本が出来ていないのに、技のやり方を工夫するということをやっていたから、
明後日の方向に行き、随分と遠回りをしてしまいました。

今だからこそ思う事ではありますが、合気上げのやり方を工夫するよりは
その一つ一つの基本を正しく行うことを意識して稽古する方が
何倍も速く’合気’を習得出来たと思います。

合気上げは、’合気’の原理を理解するために大変重要な稽古です。

基本であることに間違いはありませんが、私は合気上げは型稽古として捉え、
その中に含まれる姿勢や呼吸、体捌き、意識の持ち方等の基本となるものを見定めて、
一つ一つを丁寧に詰めていくのが、上達の早道だと思います。

最近は稽古をする度に基本の大切さを身にしみて感じます。

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